再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1134:本音と建前

自身の想いが強ければ、周囲の声はただの雑音でしかない。

親や兄弟や周囲の人々が求める理想的な要求に、必ずしも応える必要はない。自分がなりたいものになればいいし、自分がなりたくないものにはならなくても、もちろん一向に構わない。自分自身が思い描いた理想ってヤツが正しいのか正しくないのかは関係なく、ただひたすらに、それを追い求めることこそが生きる意味だ。

ただ、人っていうのはそこまで強くはできていないようで、受けた恩とか、通さなければいけない筋とか、自分以外の誰かの期待や希望にはどうしても抗えず、いろんなものにがんじがらめになった末に、自分の思ったものとは別のものにならざるを得ないこともままある。もちろん、自身が勝手に頭の中に作り上げた理想郷が正しいかどうかもわからない。その自信のなさが、周囲の余計なお世話に流されて思ってもいなかった地に辿り着く事象を誘発させ、「あれれ?なんか違ったかもなー」なんてことになったりもする。致し方ない。

だがしかし、他人の勝手な妄想の果てに作り出される本当の自分とは違う自分が世間をひとり歩きする、なーんてのは我慢しようと思ってもとても我慢ならない現象だ。それは違うと断言できる自信に満ち溢れているならなおさら。こちらの都合などお構いなしに勝手な理想像を打ち立て、強制的にその役回りにはめ込もうとするのは、人道的な見地からいってどうなんでしょうかねー、犬塚弁護士?って聞きたくもなる。

そういう社会とか世間とかのくだらない評価をぶち壊してやりたい、という欲求は確かにある。天邪鬼であるが故の、愚かな行為であることに間違いはないのだが、それを果たした時の爽快感=「やってやったぜ!」みたいな、これまたくだらない達成感も味わってみたいものである。

こっちの許可なしに勝手に思い描いた理想的な自分なんてどこにも存在してないにも関わらず、勝手にレールを敷いてそこを走らせようと一生懸命応援したり鼓舞されたとしても、こちらとしてはシラける一方で、「ちょっと違ったとか、ほざいてんなバーカが」とか「もっともっと苦しくなって泣いちゃえばいいじゃん」と思ってしまうのももっともな話。こちらが求めていないのだから、知ったこっちゃねーってなもんである。

これは別に男女間における恋愛に限らず、親子やら上司部下やら先輩後輩、果ては友人知人においても、自分と相手との認識の差異=ギャップによってもたらされる相容れない現象の出現であり、どこにでも転がっていそうな、ホントによくある話だ。「そんなヤツだとは思っていなかった」という言葉の中には、己の認識誤りの自省に関する要素は一切なく、特に断りもなしに勝手に思い描いた他人とは違う目の前にいる異物に対する一方的な断罪であって、言われたこちらとしては「そんなん知らんがな」「頼んだわけじゃねーし」という呆れた感想しか出てこないのが関の山、なのである。

そもそもあなたの思い描いてる「私」は、はなから「私」ではないんだから、そいつをわざわざこちらからぶっ壊してやろうじゃないかという親切心。誤解を解くことと同じだ。正しい認識に合わせるだけ。それのなにが悪い?ってな話だ。それで相手がガッカリしようが泣いてしまおうが、こちとら知ったこっちゃねーんですよ、バーカ!ってことである。

うん、正しい。こいつは間違いない。非常に正しく尊い行為である。多少の表現の雑さはあったとしても。

ただ、果たしてそこまで非情になって「本当の私はこれなんだ!」と、シャカリキになって主張できるものだろうか?

そもそも自分の考える「私」が本当に正しいのか?

そうなりたい自分と、周りから見える自分の相違ってことは、今の「私」はなりたい姿になっておらず、周りから見えてる「私」が現実的だったりもする?

いやーん、そうなのかも...。

うーん、まさに堂々巡り。

まぁ、ここ最近よく使っている言い回しの繰り返しになるが、人の心は思っているほど強くはない。わざわざ自ら孤立無縁な境地に立とうなんて物好きはそうそういない。便利な調整弁みたいなものが心の脇っちょに付いていて、嘘と本音の入り混じった当たり障りのない思いやりのある言葉しか口から出てこないようにできている。「そんなヤツだとは思ってもいなかった」と言われて最初に出てくる言葉は「あ、そうすか、なんか、すみません」ってのがベストアンサーなのかもしれない。それが大人ってやつなのかもなー。

長い年月、周りも自分も騙し続けて、最後の最期で思いっきり「王様の耳はロバの耳ぃー!って本当のことを言い放ってやるー!」って思ったりもするけど、イタチの最後っ屁みたいで、それはそれでなんだか後味が悪そうだ。

やっぱり、もうしばらく大人しくしていることにしよう。

でもいつか、いつの日にか、ぶちまけてやりたくなる、そんな衝動を抑えられなかったりもしちゃったりして。

ふふふ。