再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1175:リーダー論

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リーダーとかマネージャーとか、管理職と言われるものになってから、はや20年近く経つ。勤務地は日本各地を転々としながら、どこに行っても立場はそれほど変わらねど、時代の変遷もあって、管理職の立ち位置としては微妙に変化しつつあるのが現在地である。

管理職になりたての当初はまだ30代半ば。いわゆるプレイングマネージャーってやつで、片手間に労務管理だけしてればいいんだろうと、完全に舐めきった態度で過ごしていた感がある。今から20年近く前の出来事ということで許してほしいのだが、完全に上から目線で指示を出し、部下が自分の思った通りの結果を出さないと、「なんで俺ができるのに、お前はできないんだ?」と、口に出すことはなくても態度にそれが現れていたような気がする。無言の威圧感というか、覇気みたいなオーラみたいなものが溢れ漏れ出ていて、近寄りがたい雰囲気を自然に醸し出していたように思う。会社だから仕方がないのだが、仕事中に雑談めいたものを披露することなどほとんどなく、ただひたすら仕事に打ち込んでいた頃の話なので、自分自身にもそれほど余裕がなかったのも、その原因かもしれない。だが、職場には20代から50代の女性が揃っていたので、深夜まで残業しつつTORNEで当時のドラマを録画しておいて、それをPSPとかWalkmanに転送して朝の通勤電車で観て、翌日の話題についていけるように努力(?)していたことも記憶している。それなりに、コミュニケーションには気を遣っていた、ということになるのだろうか。ま、そういうことにしておこう。

管理職になって困ったのは、仲間はずれになったこと。それまでもリーダー的な立場で後輩をまとめて仕事をしていたのだが、管理職になった途端に、それまでバリバリこなしていた実務をほとんど取り上げられることになる。仕事のほとんどがトラブルシューティング的なものだったので、それまでの経験とカンとコツみたいな蓄積を活かして、それなりに成果を上げてきたつもりなのだが、それを自らの手で解決に導くことを封じられ、言葉で指示を出すだけになると、なんというか、ヤキモキするって感じになって、やっぱり自分の手を動かした方がはやく解決するんじゃないかなんて思ってしまい、余計なストレスを溜め込むことになる。それを解消するために部下から仕事を取り上げてやってしまおうか、なんてことも考えたりしたが、もちろんそんなことをするわけにはいかなくて、ある時からは「実務をやることはもう未来永劫こないんだ」と思い直すことにした。チームの誰かが欠けた時、いざとなったら管理職がその穴を埋めることが理想的だと思っていたのだが、そんなの年に数回あるかないか。そのあるかないかわからない機会のために、離れていた実務をいつでもできる準備なんてできるはずもない。だからそこは割り切って、管理職という役を見事に演じきる方向へと舵を切ったということだ。

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管理職がやることは、チームの雰囲気作りをして生産性を高めることだとか、意思決定を下して向かう方向性を定めることだとか言われているが、そのためにできることっていうのは、仕事とは呼べないほどのどうでもいいことが多かったりもする。もちろん、ゴリゴリの実務はやらないものの、担当する業務範囲の専門的な知識は常に最新化しておかなければならないし、メンバーに欠員が出た場合にはプレイングマネージャーとして、一度は諦めかけていた実務をこなせる能力もキープし続けなければならない。PCを使った仕事が主体となる事務部門においても、最新のアプリのレアな機能まで使いこなせないと仕事にならない時代でもある。ただ単にこうやってテキストを打ち込むことだけが仕事ではなく、プレゼン資料なんかはレイアウトとか色味とかセンスを問われる時代だ。そういうものにもキャッチアップしていなければ、もはや管理職なんて務まらない。

更に、前時代的な上司が敬遠される時代でもある。いつもニコニコ、部下のやりたいことを優先し、部下のキャリアアップに寄り添い、メンバー個々人の能力をできる限り向上させることに注力しなければ、管理職なんて務まらない。自身が決めた方向性の責任を取ることはもちろん、人材育成能力にも長けた人物でなければ、立派な上司とは認められない。いやはや、大変な時代になったもんだ。自分以外の者たちが作り出す成果を食い物にして生きなければならないのだ。だから、自分のことはさておき、メンバーのご機嫌伺いなんてのが最も重要な要素を占めたりもするものだから、余計にストレスが溜まる職業でもある。そりゃ若い人たちが管理職になりたくないって思うのもわかる気がする。

とは言っても、管理職にならなければ給料は上がらず、家族を養ってなんていけやしない。自分がしたくないことをして、一日の大半をそんな会社で過ごして、何が楽しいんだろうか。手に職さえあれば、こんな人生にはならなかったんだろう。いやいや、50年も生きてきて、そんなことに気づくなんて、遅きに失するにもほどがあるって話だ。