再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1140:オススメ

他人に何かをオススメする機会って、以前はよくあったと思う。

貰い物だけどたいそう美味しいお菓子をいただいたので、お取り寄せしてご近所にお裾分けしてみたり。自分で作った料理の出来がよかったもんだから頼まれもしないのに「はりきって作りすぎちゃったから」と「デキもそんなに良くないんで恥ずかしいんだけど」なんて謙遜したりしながら、お隣さんに持って行ったり。

昭和の世界ではそんな風景があちらこちらにあった。

そんなご近所付き合いも人付き合いも希薄な世の中になって、他人に何かをオススメする機会もめっきり減ってきた。

っていうか、今どき、人に何かをオススメするなんて余計なお節介めいたことをする人なんでまだ存在するんだろうか?

最近よく目にするのは、インターネットとかでよくあるアンケートの類い。何か物を購入した後などにポイントだとかクーポンがもらえるからとアンケートのメールが送られてきたりするのだが、そのアンケートでよく、

「あなたはコレを他の人にもオススメしますか?(10段階で評価)」

みたいな設問をよく目にする。

この設問に対して、

「コレは相当いい物だから他の人にもオススメしなくちゃっ!」

って思った人は最高評価(10点)を付けるのだろう。

「いや、コレは買って使ってみたけど最悪。他の人になんか絶対オススメできないわ...。」

って思った人は最低評価(1点とか0点とか)を付けるんだと思う。

しかも、この設問はその前に購入した人に対しても、

「あなたはコレを気に入りましたか?」

みたいな設問の後に出てきて、購入した本人が気に入ろうが気に入るまいが人へススメルるかススメないか聞いてくるこの設問が出てきたりもするからウザい。

購入した自分でも気に入っているから他人にもオススメするんであって、自分が気に入ってなかったらオススメなんてするわきゃねーだろ?と思ったりもするわけで、売り主だか主催者だかが本当に聞きたいことが何なのかよくわからなくなってくる。

そもそも、こちとらインフルエンサーでも何でもないワケで、他人にオススメしたところでそれを読んだ人に信じてもらえるのかどうかも微妙だし、一介のいち購入者である自分に求心力なんて求められても困るだけであって、

「何でこんなこと質問してくるんだ、コイツは?」

みたいな印象を持ったりもする。

レビューを書いたら次回購入時に何%Offとか言ってくるメールも同様。こんな何処の馬の骨ともわからん輩の言うことなんて誰が信じまっかいな、サクラかもしれないじゃーん、と思ってしまう。

しかも、自分が購入した物を自分が気に入るか気に入らないかは、最低限、自分自身のことだから解るとして、その自分が気に入った物が、自分は気に入ったからと言って他人がどう思うかなんて誰にもわからんし、見ず知らずのアカの他人にそれをオススメするほど厚顔無恥でもなけりゃ、自分を神か何かと勘違いしてる無遠慮なヤツだと思われるのも腹が立つ。そもそも、自分が気に入ったからと言って他の人もそれを気に入るかどうかなんて考えて買ったワケではないし、そんな他人の好みなんて知る由もない。あえて、良かれと思ってオススメしたのに、拒絶されたり微妙に苦笑いされちゃったりしたらそれなりに凹むだろうし。だったら、そんな小さな親切かもしれないけど大きなお世話にもなりかねないような行動はなるべく自重した方がいいんじゃね?と思っちゃうし、あえて他人様から後ろ指刺されるイバラの道を行き悦に入るようなドMではないという自覚だけはある。

だから、先ほどのような、

「あなたはコレを他の人にもオススメしますか?(10段階で評価)」

みたいなアンケートに回答する際には、おべっかで高めの評価をするのもなんか違うし、かといって最低点をつけるのも申し訳ないので、自分が気に入って満足していたとしても、失敗したなー買わなきゃよかったと思っていたとしても、たいていの場合はちょうど真ん中にあたるであろう「5点」という微妙な回答をしてしまいがち。

そんでもって、この設問の後には必ずと言っていいほど、

「先ほどの設問であなたがそう評価した理由をお書きください。(任意記入)」

みたいな面倒くさい設問が続いて出てきたりして。

そういう場合は正直に、

「他人の趣味趣向に合うかどうかは当方では判断いたしかねるため、当該設問にはお答えしづらく感じております。」

なんて書いちゃったりもする。

だから、ジオン公国突撃機動軍大佐にして資源採掘地帯オデッサ基地司令のマ・クベのように、

「あれはいいものだーっ!」

って、声高々に言ってのける人の気持ちが全くもってわからん。

物なりサービスなりの良し悪しの評価基準は、人によって異なる可能性の方が高いワケで、全く同一だったり同質の価値判断だったりすることの方が稀なんじゃないかと思っているので、自分が気に入った物であったとしても他人も気に入るとは限らないから、人に何かをオススメするなんてことはしない方がいいに決まっている。

自分が「気に入った」とか「好きだ」と表明するのは別に妨げようがないことなので勝手にほざいてりゃいいんじゃないかと思うのだが、その言葉を信じるも信じないもあなた次第だし、こちらからあえてオススメした後で文句言われたって「知らんがな」としかリアクションしようがない。だったら回避できるリスクはなるべく最初から回避しておこうって思うのが自然の流れっていうヤツで。

世の中のテレビやら雑誌やらSNSやらで、お世話好きなお節介焼きがいちいち「コレは貴方にもオススメてすっ!」って言ってくるシロモノがあったとして、それを信じるか信じないかはこちらの判断だし、そのオススメされた物が本当に良い物だったとしても、それをオススメしているのが深夜の通販番組に出てくるようなタレントだったりしたら信じないだろうし、自分の推しのアイドルがオススメしてきたりしたら条件反射的に購入しちゃったりもするワケで、結局のところソイツを買うか買わないかはその物の持つ価値とは関係のないところで決まっちゃったりもするのも何だか納得できない話にもなってくるので、やっぱり迂闊に人にオススメなんてするもんじゃないなーって話。