再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1155:整うのか?整わないのか?

サ活である。言わずと知れた「サウナ活動」のことである。

今から20年以上も前の話、まだ独身で休日にやることが何もなく暇を持て余していた頃、プールで泳いだついでに広いお風呂に入れるということで通ったスポーツクラブがあった。風呂の中にサウナも常設されていて、ついでにサウナでも汗を流していた。水風呂もあったので、12分計が1周するまで頑張って、水温20度前後の水風呂に3分間入って、またサウナに入って、水風呂に入る。これを4回ほど繰り返して、最後にアクエリアスを飲んで一人暮らしの家に自転車で帰るという活動をしていた。

その頃のサウナと言えば、おっさんだらけで若者など全然いなかった。素肌なのにプリントTシャツを着ているような艶やかな御仁も、出禁にならずわんさかといらっしゃった時代である。ただただ汗を掻き体内から余分な水分を出すだけで、ちょっとした爽快感はあったが、気持ちよさとは無縁の、時間を持て余した若者がするにはあまり意味のない地味ーな活動だった。

最近の趣味である散歩を始めた数年前から、サウナには行かずとも散歩後に熱い風呂に入って汗を掻く活動が再開した。昔を思い出して42度の風呂に12分間つかり、3分間水のシャワーを浴びる。これを3~4回繰り返すと体重が1~2Kgほど落ちることを思い出す。もちろんその後に水分を補給してしまうから元の木阿弥なのだが。それでも一瞬でもいいから体重を少しでも落としたいという願望からフ活(フロ活動)をこれまで週末に繰り返し行なってきた。流石に夏場は散歩だけで相当の汗を掻くため、猛暑続きだった今年の夏はフ活は一旦中止にしていた。

最近のサ活でよく言われるのは「整う」という状態があるということ。その快感が忘れられなくて若者がこぞってサウナに通っているという。サウナで汗を掻き、水風呂で体温を落とすも脳が活性化するとか何とかで、脳内物質がジュワ~っと溢れてきて、それはそれは気持ちがいい状態になるという。残念ながらオリジナルのフ活ではその状態にまでなることはなかった。フロに浸かり、12分間は我慢して汗を掻き続け、水シャワーを浴びて、その後に訪れるであろう「整う」という状態を期待してみたのだが、何となく頭の中が弱めにジワ~っとするだけで、その後に訪れるジンジンとする頭痛に似た何かが熱中症寸前である危険領域に入ったことを意味するだけ。「気持ちいい~」と心の底から思えるほどの極限状態になることはなかった。所詮は付け焼き刃というか長めにフロに入っているだけなので、「まぁこんなもんか」と半ば諦め状態がここ数年続いていた。その原因は、通常のサ活で言われている「外気浴」がないことにあると、なんとなく予想はついていた。流石に単身赴任先のフロでフ活をしていて、そのまま素っ裸でベランダまで行って外気浴する気にはなれない。ご近所さんの目もあるし。水シャワーを浴びた後、締め切った水蒸気だらけの風呂場で数分間佇んでみるものの、「整う」と言われる状態になることは、まぁなかった。

ところがである。つい先日、ひょんなことから、その「整う」という状態になる機会に恵まれた。

きっかけは、カミさんと娘と行った温泉旅行。大浴場には内風呂の他に露天風呂があり、室内にはサウナと水風呂が併設されていた。カミさんと娘は一緒に温泉を楽しんでいるのだろうが、こちらはたまの家族旅行なのに大浴場では一人ぼっちである。せっかくだから久々にサウナに入ろうと思って、12分間我慢して汗を掻き、水風呂に入ってみた。ジッとしていると身体と水の間にできる「天使の羽衣」状態を確認することができた。最近のテレビでやっているサウナ特集でオリラジの藤森氏が言っていたのがこれかぁーなんて思った。流石に身体が冷えてきたので露天風呂に入ろうと屋外に出たところに何気にイスが置いてあった。なるほど、ここに座って外気浴をするのか。水風呂から上がると不思議に外気温が暖かく感じられたので、そのままイスに座ってみた。先程まで肌に滲んでいた汗はすっかり引いており、表面はどちらかというと乾燥に近い状態。イスに座っていても寒くはない。そのままの状態で1分間くらい経過したところで、その時は突然訪れた。頭の中にジワジワ~っと広がる何かが溢れてきて、味わったことのない気持ちよさが脳内いっぱいに広がる。「なんだこれ?」と思ったのもつかの間、その状態が長い間キープされ続けることがわかる。何に例えればいいのだろう。あまりこれまでで味わったことのない状態で、強いて例えるなら、朝起きた直後にキツめのタバコを吸った時のクラクラ感、いや、こんなところで言うのもなんなんだが、賢者タイムに近い状態とでもいうのだろうか。とにかく気持ちいいのだ。爽快感とも違う。リフレッシュされた感じでもない。ジワジワと気持ちよさが押し寄せてくる感じ。それが一瞬ではなく結構な長い時間続く。

うーん、これはやめられない。

身体が冷えてきた頃、再びサウナに入る。一度身体が冷えてしまったせいか、今度は汗が出るまでに相当時間がかかる。12分たった頃でも体表にじんわりと汗を掻く程度で、最初の時のような滝のように汗が流れることはない。ただ身体は芯から温まった感じにはなっているので、再び水風呂に浸かり、身体が冷え切ったところでまた外気浴をしてみる。

きたきたきたー!賢者タイム再びである。

なるほど、これが「整う」ってことなのか。こいつはすげーな。やめられないってのも解る。

ということで、最近は2時間の散歩後にスーパー銭湯に通ってサ活にどっぷりハマってしまった、という話である。

ちなみにサウナハットは被ってはいない。なんせハゲだから。