再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1167:病院で診察を受けました。

行く病院も決まった。

保険会社とも話をして治療費の支払い滞り役やってくれるということになった。

会社には出社したが、これといった仕事もしていないので、後付けではあるが午前中は半休にもした。

まだ午前10時を少し回ったところで時間的な余裕もある。

こうなったらさっそく病院に向かおう。職場の仲間には病院に行って、午後は自宅で在宅勤務にすることを告げて、スーツに着替えて会社を後にすることにした。

年上だが部下になる先輩からは

「どうせ保険で下りるだろうから、タクシーで行かれた方がよろしいんじゃないですか?」

と気を使っていただいたが、まぁそんなに大したケガでもないので、歩いて行きますよと、見栄を張って徒歩で病院に向かうことにする。その道程は2Kmもないし。

今朝は暖冬には珍しく氷点下だったので、この冬はじめてダウンジャケットを着てきたのだが、日中の気温は10℃近くまで上がる予報。まさか日中から散歩するとは思っていなかったので、このダウンがまず失敗だった。ちょっと歩くだけで汗ばんでくる。

仕方がない(?)ので、途中のコンビニでクールダウン。いや、ただ単にタバコで一服したかっただけだ。なんせ、会社は就業時間中は禁煙なもんで。それにしてもタバコがうまい。特に、吸ってはいけない時間帯に吸える喜びに勝るものはない。

そこから登り坂になっている大通り脇の歩道をただひたすら西に向かって歩く。見えてきたのはかなり古めかしい建物の整形外科医院。その手前に大きなお屋敷があったが、その整形外科医院と同じ名字の表札。うーん、かなり儲けていらっしゃる様子。果たして医者としての腕前はどうなんだろうか。

入り口でスリッパに履き替えて受付へ。

「すみません。先程お電話した者です。✕✕損害保険から電話も入っているかと思いますが。」

「はい、連絡ありましたよ。交通事故だったそうで、大変でしたね。順番が来たらお呼びしますので、座ってお待ち下さい。」

薄暗い廊下の脇に並んでいるベンチに座って順番を待つことにする。平日の午前中ということで、他の患者の年齢層はかなり高め。そこにスーツにひげの怪しげな男。ミスマッチだ。黙って大人しくしておこう。細長く薄暗い廊下のところどころに石油ストーブが置いてあって、見た目ほど寒くはない。ダウンコートは脱いでベンチに座ってスマフォをいじって持て余した時間をなんとかやり過ごす。

「ひろさのさん、診察室にお入りください。」

お呼びがかかったので診察室へ。白衣を着た医者はおそらく70歳を超えていると思われるベテランの方とお見受けした。たぶんこの病院の院長先生なのだろう。評判によると、地域の人からも信頼されている名物先生のようだ。

「どうした、車に跳ねられたのか、どこが痛い?」

ぶっきらぼうな言い方だが、決して嫌な感じではない。

「どこかぶつけたという自覚はないんですが、首を痛めたのと、右腕全体に痺れがありまして。あと、地面に尻を強く打ったみたいで尾骶骨の上の辺りが痛みます。」

「右腕の痺れ、首から来ているのかもしれないな。首は動くか?」

そういっておもむろに立ち上がり、人の頭を前後左右に動かし始めた。だから、首が痛いんだってばさ。

「前はどうだ?後ろは?右左は動くか?」

頭を掴んでグイグイ動かす。いや、そんなに痛くはなんですけど、そうガサツに動かされても。余計な力を入れるとこの瞬間にどこか痛めそうなので、ひとまず先生のやりたいようにさせてあげることにした。

「右腕の痺れはどうだ、肘をぶつけたんじゃないのか?」

「えぇ、コートの肘の辺りに擦れた跡がついていたので、たぶん車のボンネットに当たっていたみたいなんですが、打撲とかそういのはないみたいで。」

今度はおもむろに右腕を取らてて肘のあたりを指でグリグリされる。

「ここ、これ、痛くないか?」

肘の関節の間にあるシコリみたいなものをグリグリとされれば、そりゃ痛いに決まってますがな。

「は、はい、痛いです...ね。」

「たぶんここだな、これが痺れの原因だ。」

...本当か?こんな簡単にわかるものなの?

「とりあえずレントゲンを撮ろう。また呼ぶから、廊下で待っとけー。」

「お待ち下さい」とか「待ってて」とかじゃなくて「待っとけー!」って。これがツボ。思わず笑いそうになったが、何とか我慢してひと言お礼を行って廊下に出る。

レントゲンを撮ってくれるのは別の理学療法士の方で、たぶん近い世代の方で、院長先生の息子さんかなんかなのだろう。打って変わって非常に腰の低い丁寧な物腰の方で、テキパキと肘と首のレントゲン撮影をしてくれた。その方は

「それでは、またお呼びしますので、しばらく廊下でお待ち下さい。」

とふつうの声がけだった。

またしばらくして名前を呼ばれて再び診察室へ。

「これが肘、これが首、どちらも骨には異常なし。よかったねー。それじゃ、温熱治療した後に、湿布貼ってやるから、また呼ぶんで、しばらく廊下で待っとけー!」

その治療方法が妥当なのかどうかよりも「待っとけー」が気になって気になって仕方がなかったが、そこはほら、こちらもいい大人なので、何とか笑いを堪えましたよ。

言われた通りに廊下で待って、首の牽引と、首肩肘の温熱治療を施された後に、フェルビナク配合の市販でも売っているような湿布を患部に貼られて診察は終了。

(つづく)