再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1160:警察に電話しました。

車に跳ね飛ばされて、数メートルほど宙を舞って、地面に叩きつけられたはずなのに、普通にスクッと立ち上がれた。これががまた意外だった。

それは被害者であるボク自身のみならず、車の運転手である加害者の女性も、周囲の取り巻きの目撃者の方々も、全員意外なものを見たという感じになっている。

周囲の見物人目撃者の方々に向けて、

「えーっと、とりあえず大丈夫みたいなんで。なんか、お騒がせしました。すみませーん。てへへ。」

集まったみなさんの好奇な視線に晒されつつ、無事だったことでなんとなくスベった雰囲気であることも感じつつ、ひとまずみなさんには「はい、かいさーん」って宣言をしたみたいになった。「驚かせやがって」と文句の一つも出るかと思ったが、みなさんすんなり納得された様子で、三々五々ちりぢりに帰っていただくことに。

でもまぁ、とりあえず事故は事故だから、警察を呼んで来てもらった方がいいぞーと誰かに言われて、ふと我に返る。

そうだね、今は車に跳ね飛ばされた興奮状態にあるので、変なアドレナリンが脳内に溢れかえっていて、痛いところも全然痛くないのかもしれない。とりあえず警察には来てもらって、万が一のためにも事故であったことを証明しといてもらった方がいいかもな。

そこで、加害者の女性に

「警察に連絡してもらえますか?」

とお願いしてみた。

が、人をハネて気が動転している様子で、それどころではないらしい。

「えっと、警察に連絡って、どうすれば...?」

あ、これはダメだ。

電話するんでしょーってツッコミたくもなったが、それも面倒くさくなって、

「あ、わかりました。それじゃ私が警察と連絡取りますよ、いいですね?」

と確認してiPhoneをポケットから取り出す。

コートのポケットに入っていたiPhoneは無事で画面も割れてなくて、普通に使える。それを確認してから、110とポチって電話。

「はい、警察です。事件ですか?事故ですか?」

「事故です。交通事故です。」

「事故ですね。あなたは加害者の方ですか?」

「いえ、被害者です。」

「...は、はい。そうですか。車両同士の事故ですか?」

「いえ、被害者の私は歩行者で、相手の加害者は車です。車に轢かれました。というか跳ね飛ばされたんです。」

「...え、あ、はい。そうですか。ケガとかは...大丈夫なんですか?」

「えぇ、まぁ、はい。なんとか、大丈夫みたいです。」

「...あ、そうですか。でも、どこか痛くなったり、途中で気持ち悪くなったりしたら、我慢せずに救急車を呼んで病院に行ってくださいね。」

いやいや、そうしたら加害者ひとりになるし、逃げられる状況になっちゃうじゃん。まだ加害者がどこの誰かも知らないのに、そんなことできるわけない。警察来るまで、ここから動けるワケないでしょーに。

「ありがとうございます。とりあえず大丈夫なんで。」

「...そうですか。あ、場所はどちらになりますか。付近に何か目印になるものはありますか?」

「えーっと、◯◯公園の北側の入り口付近のT字路になります。住所はたしか△△町の✕丁目だったかと。」

「あ、はい、場所は特定できました。」

そりゃだいたいの住所も言ってるんだから特定できるだろ、警察なんだし。

それにしても、この最中に東西南北の方角もちゃんと認識できてるって、オレってすごくなーい。

「それではこれからパトカーが向かいます。到着まで10分から20分かかりますが、よろしいですか?」

小雨が降っているし、暗いし、寒いので、なるべく早く来てほしかったが致し方なし。

「はい、大丈夫です。お待ちしています。」

といったところで電話を切る。

隣ではまだ気が動転していると思しき加害者の女性がポツンと立っている。人をハネてしまったショックなのか、肩を震わせてすすり泣いている。いや、泣きたいのはこっちだと思うんですけど。泣かないけどね、だって男の子だもーん。

だがしかし、警察が来るまでの間、このお通夜みたいな雰囲気で、薄暗い道端で二人っきりで過ごさなくちゃならんのかと思うと、ホントに生きた心地がしないもんで。

なんかこっちが気を使っちゃって、加害者の女性に

「大丈夫ですか?」

なんて話しかけちゃったりなんかしちゃったりして。どんな関係性やねん。

他にやることもないので、再度、身体の状態を確認してみることに。

車とぶつかった右半身から確認。右脚、痛くない。右膝、曲がる。右太もも、持ち上げられる。右腕、痛くない。右肘、曲がる。右腕、上がる。右肩も痛くない。腕を捻っても痛くない。よしよし。

車とはぶつかってない左半身の左脚・左腕も問題なし。

頭、どこもぶつけてない。痛くない。

首、右向く、左向く、上向く、下向く、右に倒す、左に倒す、痛くない。

背中、リュックがある。痛くない。

腰、背中から地面に落ちた後に道路に強打している。ちょっと痛い。でも曲がる。

iPhoneは無事。左腕につけているApple Watch、割れてない。

メガネ、したままで落としていない。レンズも無事。

あれ、ホントに何の被害もなし?

まさに奇跡じゃんか。

いやー、知らないうちにショッカーにさらわれて、まさか改造人間にされているとは思わなかったわー。

(続く)