再☆煩悩の赴くままに~日々是反省~

自省を込めて貴女に贈る鎮魂歌

1161:実況見分してもらいました。

それにしても寒い。今年の夏は暑くて10月まで連日夏日が続いていたとは行っても、すでに11月末の日もくれた夜18時過ぎ。こんな寒空の下で10分も20分もパトカーの到着を待つことの方が、車でハネられるよりもツラいなんて思わなかった。

まだまだやることがないので、隣ですすり泣いている加害者の女性を見る。

年齢は30代かな。会社の制服の上にダウンのコートを羽織っているような服装。でかいワンボックスカーを運転していたところを見ると、家族持ちの主婦なんだろうか。同乗者はいないみたいだし、子供のお迎えの途中かなんかなのかな。

「あの、お子さんのお迎えの途中とか、そんな感じですか?」

「...。」

「ご家族に連絡とか、されなくて大丈夫ですか?」

「...はい、大丈夫です。」

「あの、警察に来てもらって、ちゃんと事故だって認識しもらっておいた方が、自動車保険とかの手続きに必要なんで、そういうことですから。」

「...はい、わかりました。」

っておい、なんで被害者が加害者に気を使わにゃならんねーん!

そう言えば、20代の頃、キャバクラに行って、お姉ちゃんの話が全然面白くなくて、バラエティー番組のMCみたいに会話を回してて、なんでこっちが金払ってるのに場を盛り上げにゃならんねーんって思ってたことを、なぜかこの非常事態のこの時に突然思い出した。

そうこうしているうちに、本当に20分くらいかかって、ハイエースみたいなワンボックスの白黒のパトカーがサイレンも鳴らさずに到着。制服を来た警察官の男女2名が降りてきた。男性の方が上司みたいな雰囲気。

「えー、お待たせして申し訳ありません。警察です。あなたが電話をくださった...」

「はい、被害者です。隣にいる方が車を運転されていた加害者になりまして。」

「あ、加害者の方。わかりました。」

ということで、事情聴取が始まる。

男性の警察官が加害者、女性の警察官が被害者の対応をする分担になっているようで、女性の警察官に身元を証明する免許証を渡す。免許証に記載のある住所は住民票所在地住所で、現在は単身赴任中で別の住所に住んでいることを伝え、口頭で現住所も伝えた。連絡先を尋ねられたので名刺を取り出し、そこにプライベートの携帯電話番号を書いて渡す。その間、男性の警察官が加害者の女性の身元を確認していた。

今度は、男性の警察官が話かけてきて、実況見分が始まる。

まずは歩行者である被害者の動作確認。横断歩道手前で1台目の車が半ば強引に右折してきたこと、1台目をやり過ごして横断歩道に差し掛かり横断途中で2台目が右折してきて接触したことを実際に動作を交えながら伝える。

すると今度は加害者に実際に車を右折前の状態に戻して、ゆっくりと右折させる。横断歩道上にいる警察官の姿が見えるとか見えないとか、そんな確認をしている。遠目で見ている雰囲気ではあるが、加害者は横断歩道上の歩行者が見えなかったと主張しているみたい。ま、たしかにチャコールグレーのスーツに黒いユニクロのハーフコートを着ているから、夜だと見えづらいかもしれない。小雨のせいで黒い折りたたみの傘もさしていたし。だが、T字路の横断歩道前後の電柱には街灯もついているしねぇ、見えないはずはないんだが...。

そう思っていると、男性の警察官が、

「私の姿、運転席から見えますよね?見えないはずはないですよね?」

みたいなことを大声で話している。残念、加害者の主張は通らなかったみたい。ご愁傷さま。

続いて、被害者と加害者、互いの連絡先を交換してくださいと言われたので、携帯電話番号と氏名だけ交換。自身の身の潔白というか、当たり屋でもないし、その筋の変な輩ではないことを証明しておいた方が良さそうかと思って、加害者にも名刺を渡しておいた。ちゃんとした会社に勤めている真っ当なサラリーマンですよ、って言いたいがために。

最後に、男性警察官から加害者に一言お説教。信号があるなしに関わらず、横断歩道上の歩行者は優先されるべき交通弱者であり、自動車は右折する際にはきちんと周囲の状況を含めて把握してから動作に入るように、みたいな当たり前のことだった。うんうん、ほんと、その通りだよね。

これで終わりかと思ったら、今度は被害者にも話があると。ケガをしていない様子なので、今回の事故の扱いが未確定だという。警察が扱う事故は2種類しかなくて、人身事故か物損事故のどちらかしかないらしい。この後、身体のどこかに不調をきたし、病院に行かれるようなら診断書を忘れずにもらうようにしてもらいたいと。その上で、その診断書を警察に提出して人身事故扱いにしたいかどうか判断してほしいとのことだった。へぇー、そういうもんなのか。

ん?ちょ待てよ。

ってことは、いま現在は物損もないし人身でもないので、事故ですらないってことなの?でも、加害者の運命がこの手中にあるってことなのね、なるほど。

さっき、歩行者が見えなかったとか私は悪くないみたいなことをほざいていた印象もあるので、どうしてくれよっかなー、なんて思っちゃったりして。

ま、とりあえず、それは後でゆっくり考えよーかなー。ふふふ。

(つづく)